屋根裏部屋 03
Melting Border
このタイトルは2015年ごろから頭の中にあった。
『境界線』というのは人間の分類上の都合で設定されているだけで、実はそのような『境界線』などはそもそも存在しないのではないか?という疑問が常に頭の中にあった。
『質量をもつ物質』と『形のないエネルギー』というものの境界線は実は存在しておらず、質量とエネルギーは等価である。
『絵画』と『写真』の境界線も実は存在しておらず、互いに行き来を繰り返しているだけなのかもしれない。
『そもそも存在していない境界線』これをどう作品に落とし込んでいくかを考えていた。
2024年2月に行った展示用に、別のシリーズ Interface の作品を作ったときに『複数画像の重ね合わせ』を利用してみた。
複数の写真を重ねることで、様々な色調やパターンが生まれ、木々の持つ枝の複雑な形の上に、ある種のダイナミズムが付加されていった。
視覚上は見えない木のエネルギーが可視化されたような感覚があった。
この方法を試しているときに、重ね合わせる写真の種類や重ね合わせるときのアルゴリズムにより、まるで複数の写真の境界線が融解し、まるで一枚の画像に融合されていったような作品も生まれていった。
長年、考えてきた『Melting Border』というタイトルに合致する作品はこれなのではないかと思い、2024年5月の展示から、シリーズとして発表を始めた。